ちょっと別の角度から、自然を考える!森林の遷移について

  12月の終わりになりました。しばらくブログをアップしていないのは、紹介すべき自然がほとんどなくなってしまったからです。冬は、植物の活動は休止します。残っている木の実を見るくらいしかありません。つまり、ブログのネタがないのです。その間、ちょっと別の角度から森林の自然について、何回かに分けて話題を提供してみたいと思います。

森林の遷移について

 

 このところずっと、作手や岡崎の野山を歩いて目についた植物をご紹介する形でブログを書いてきました。ボクの知らない植物がいかに多いか、痛感しているところです。自然に詳しい人は、どんな植物でも名前が出てきて、その生態を知っておられるのですね。うらやましいと思います。野山を散歩する楽しみは、樹木や草の花々の美しさに出会うことでしょうね。花ばかりでなく、姿かたち、実や冬芽の美しさにも感動します。それらの感動をお伝えしたくて、ブログを書いているわけです。名前が分かると、図鑑などでその植物の詳しい特徴や生息環境など生態を知ることができますので、名前の同定がとても大事になるわけです。

 でも、そればかりでは、自然の今を十分に理解したとは言えません。別の角度から自然の成り立ちを考えてみたいと思います。今回は、生態学の基本として言われていることに、森林の遷移という考えがあります。目の前の森が、遷移のどの段階にあるかを知ることはとても重要だと思いますので、素人の聞きかじりですが、ボクの下手な文章を書いてみたいと思います。

 

 森の出発点とは? 裸地から草原、灌木へ

自然は、大規模な山崩れが起こったり、あるいは大規模な山火事が起こったりすることがあります。そこには植物はほとんどなくなり、岩や土砂が積もった裸地が出現します。あるいは大規模な火山活動で溶岩や火砕流が堆積すれば、地表に植物がなくなり、ほとんど裸地になります。海岸地域では、津波が襲うと大半の家屋と森林が押し流され、裸地状態になります。5年前の東北地方を襲った巨大津波を思い起こしてください。津波が襲ったところは、根こそぎ森林が破壊されました。それらが、森の移り変わりの初期状態(出発点)と言ってもよいでしょう。

最初はそうであっても、年月が経つにつれて、森が出現します。富士山でも他の火山でも、噴火当初は全くの裸地状態であったのに、今はほとんどの山体が森林に覆われています。砂漠のような植物が全くない環境であっても、雨が降る状態の気候に変化すれば、植物が生えてきます。裸地から森へと、植物はどのように移り変わっていくのでしょうか。

 たとえ裸地であっても、そこに他の地域からの種が飛んできて、土壌と水分があれば発芽して草が生えてきます。溶岩などであれば岩石が固くて土壌がないので、種は発芽しません。そのようなところでは苔など地衣類がつくだけです。地衣類が付いて増えれば、雨水を蓄えますので、草の種子は発芽できるようになります。昔、「浅間山の鬼押し出し」を歩いたことがありますが、330年(1783年)ほど前の大規模噴火で流れ出した鬼押し出し溶岩流の原野が広がっていました。荒涼とした風景ですが、溶岩の窪みには草本や灌木が生えていました。300年少々しか経っていないのに、植物が生育しているのです。おそらく1000年も経たないうちに、立派な森とは言えなくても、森林が成立することでしょう。

 日本は温帯に属していますので、夏と冬の気温の変化は大きいですし、毎日の気温変化も大きいです。すると裸地になっている硬い岩石も、気温変化で次第にボロボロに風化していきます。それに雨が降って鉱物が化学的に分解され、土壌が形成されていきます。三河地方は花崗岩地域が多いですが、新しい道路の切り割りなど花崗岩が露出しますが、10年も経たないうちに岩石の表面はボロボロになり、植物や樹木が生えてきます。

草が繁茂するいうことは、毎年草は枯れますので、土壌に有機物が供給されるということです。最初は一年ごとに生え変わる一年草の草原が形成され、年を経るにつれて次第に多年草の草原に代わっていきます。多年草というのは、根が何年も枯れないで何年か毎年植物が成長する草本を言います。風化作用で生じた土も、有機物が無ければ植物は育ちません。草の繁茂する量が多いほど、土壌が豊かになり、樹木でも成長することができるようになります。さらに灌木や、乾燥した場所でも土壌が乏しいところでも生えるアカマツのような植物が生えてきます。荒れ地にアカマツが生えている風景を見たことがあると思います。さらに土壌が豊かになると、いろいろの種類の灌木が生えてきます。

遷移の初期には、土壌が十分に成熟していませんので、樹木は育ちません。しかし、乾燥した土地にでも耐えられる樹種があります。上の述べたアカマツもそうですし、ヤシャブシなどは、乾燥した土地にも生育できる種で、他の樹木に先だった生える木という意味のパイオニア・プラント(先駆植物)と呼ばれます。ヤシャブシなどは、道路の切り割りなど新しく裸地になったところにも生えはじめ、成長が早いですのですぐに大きな樹木に成長し、大量の落ち葉を降らせます。こうして土壌に有機物が供給されるのです。
  20年ほど前、大雨で山崩れが多発した地域を歩いたことがあります。山崩れから数年たっていましたが、崩壊地にハリエンジュ(ニセアカシア)が生えていました。それもほとんどすべての崩壊地に生えていたのです。ハリエンジュも荒れ地に真っ先に生えてくる種で、マメ科の植物は根粒菌を伴うので土中の窒素を固定し、荒れ地でも成長するのだそうです。これもパイオニアプラントです。
 ネットで調べてみたら、他にもたくさんあることを知りました。アカメガシワ、クサギ、カラスザンショウ、シラカバ、ヤマハンノキ、ネムノキなどです。そういえば、ネムノキはマメ科の樹木でした。また、カラスザンショウが一面に生えている山を見たことがありますが、その場所はかつて崩壊地だったのでしょう。アカメガシワもシラカバも至る所に生えていますね。それも先駆植物だったのですね。そういう先駆植物がたくさんあるのにびっくりしました。これらはみな陽樹ですので、周囲の樹木が生い茂るようになると光が地表まで届きにくくなるので、実生が育たなくなります。

 

草原から落葉樹(陽樹)の森へ


 さらに年月が経つと、大きな樹木が生長できるようになります。大きな樹木が育つ前は、灌木程度の木本と草本ばかりですので、太陽の光が地表に豊かに注ぎます。光を受けて育つ樹木を陽樹と言います。植物の大部分は光合成によって成長していきますので、光がないところでは育ちません。落葉樹のほとんどは陽樹です。そのうちにコナラやヤマザクラなど、背が高くて樹冠の大きな高木になる樹木も生えてきます。

しかしこれらの落葉高木は、葉が薄いことと葉の密度が低いので日の光を通し、地表にまで十分に光が届きます。そのため樹木から落ちた実は発芽して、光を受けて成長していきます。そのうちに他の陽樹も生えるようになって、落葉樹の森が豊かに成立していきます。このような状態が長く続くと、シロモジ、タカノツメ、ヌルデ、コシアブラ、ホオノキなどの中・高木の落葉樹が森を豊かにしてくれます。いずれも落葉ですので、秋には紅葉・黄葉が美しい森になります。

しかし、樹木が成長するにしたがって、林床は次第に光が届きにくくなりますので、大きく成長する落葉樹は少なくなっていきます。

 

 常緑樹(陰樹)の森へ



 落葉樹の森は、秋に落ち葉を大量に落とします。小枝も落とします。ということは、土壌がさらに豊かになるということです。そうすると、その落葉の森にも常緑樹が生えるようになります。岡崎や作手では、ヒサカキ、アセビ、イヌツゲ、ソヨゴ、ヤブツバキなどの常緑低木が、コナラやヤマザクラの高木の下生えとして成長しています。これらの常緑樹は陰樹と呼ばれ、光が少なくても育ちます(全く光がないところでは育つことはありませんが・・・・)。

岡崎など標高の低い地域(標高300m以下)の森には、陰樹としてアラカシやツブラジイなどの常緑高木が成長していきます。これらの常緑樹は、葉が厚くできていて葉の密度も濃いので光を通しにくくなっているうえに、背が高く樹冠の大きな樹木になりますので、太陽の光を遮り、その下では光があまり届かす、暗い森になります。それらの常緑高木が優勢な森になっていくと、地表に太陽の光が届きにくくなり、コナラ・ヤマザクラなどの陽樹は成長しにくくなります。こうして、森は次第に落葉広葉樹から常緑樹の森に遷移していくのです。

常緑樹というと年中緑の葉が付いていると思いがちですが、実際は毎年葉の三分の1くらいは枯れて落葉します。このようなサイクルが繰り返されますので、それらの落葉によって森の土壌がさらに豊かになり、常緑の森が維持されます。常緑樹が森の樹冠の大半を占めるようになると、陽樹である落葉樹は成長できなくなり、落葉樹は姿を消していき、各種の常緑樹が多様性を見せ、多様な種類の常緑樹が大半の森になっていきます。このようにして植物の種類があまり変わらない安定した状態のことを極相(クライマックス)と言い、そのような森を極相林と言います。原生林などと言ったりもします。森林の遷移の最終段階です。

以上のように、暖温帯林では、裸地から落葉の森、さらに常緑の森へ、そして極相林へと自然に移り変わっていきます。極相林になるまでには長い年月が必要ですが、土地の条件によって違いがありますが、日本の暖温帯林では300年とか500年くらいかかるだろうと言われています。つまり500年くらい人手が入らず、自然の遷移が続いて植物相が安定して初めて極相林と言えるのです。

 

一次遷移と二次遷移


大規模な土石流や火山活動による溶岩の流出や火砕流の堆積が起こった場所では、そこには土壌がないために、植物が入りにくい環境になります。そのような場所では、蘚苔類から遷移が始まります。そのような森林の遷移を一次遷移と言います。それに対して、大規模な山火事の場合には、あるいは人間の伐採で森林はなくなっても土壌は残っていますので、その後の遷移は急速に進みます。これを二次遷移と言います。一次遷移の原因となる火山活動や大規模の山崩れは、局地的あり、まれにしか起こらない現象ですので、二次遷移の場合が大半です。

 

遷移の攪乱


このような森の遷移がセオリーどおりに進行するとは限りません。通常の遷移の進行が攪乱される、あるいは妨げられることがあります。大規模の山火事が起こったりすると、再び裸地状態に戻ります。あるいは、人間が森林を伐採しても同じことが起こります。遷移が中断してしまうのです。常緑の森でも、時々森の巨木が倒れることがあります。病害虫に侵されたりすると巨木が倒壊し、そこには地表まで光が注ぐようになり、常緑林の中に落葉樹林がスポットのように育つことがあります。例えば、鹿が樹皮を食べてしまい、トウヒの森が枯死することもあると聞きました。原因には違いがありますが、攪乱されて森が変質するような森林が大部分なのであって、極相林なんて本当は存在しないのだ、という意見もあります。

 長くなりますので、次回に回します。次回は日本の森林帯について話題にします。


 

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coppice(雑木林)

森楽、flutevioline

Author:森楽、flutevioline
退職後、都会生活ばかりだったボクにとって田舎の自然豊かな里山の生活は、新しい発見の連続で楽しい! 自然の写真が満載です! また、こんな老い生き方があることを示したみたい!

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